リリックのインタビュー
- lifesound
- 7月6日
- 読了時間: 4分
店主、激推しのピアニスト杉林岳さんにファースト・アルバムのリリックについてインタビューをさせていただきました。
色々とお忙しい中、丁寧にご回答を頂きました。
ありがとうございました。

Q1.Lyricは、岳さんにとって最初のアルバムですね?録音などにおいて緊張されたことなどありましたか?またこのアルバムの狙いはどのようなことですか?
A1. はい、人生初のソロアルバムです。レコーディングの日程が2日間しか設けられませんでしたので、かなり集中して演奏させて頂いた記憶があります。それから、冬の時期でしたが、ピアノの調律を保つために空調を入れられず、石油ストーブで乗り切らなければならなかったのは中々に酷でした(苦笑)。
このアルバムのタイトル『リリック』とは、「叙情的に」という意味です。私が心がけている「語るピアニズム」が、聴く人々に「音の叙事詩」のように感じて頂けたなら幸いです。
Q2.選曲についてお伺いします。馴染みやすい曲が多いのが嬉しいですが、馴染まれている曲だからこそ、難しいと思います。
演奏においての音楽性のレベルが問われる様に思いますが如何でしょう?
A2.ピアノ学習者にとってはメジャーで、クラシック初心者にとっても耳に心地の良い内容となっています。だからこそ、演奏家のセンスが試され、真価が問われるのではないかと思います。
Q3.この録音に使われたピアノはベーゼンドルファーでよろしいですか?
調律師は菊池さんですね?
A3はい、その通りです。
Q4.シューベルトは岳さんも大好きな作曲家だと思いますが、シューベルトの闇という話もありますが、何か感じられることはございますか?今回の選曲の4つの即興曲D番号899作品90ですが、パッセージ(で良いのでしょうか?)が素晴らしい美しい音色が真珠の輝きのように感じられます。時として楽音が唸るようにも聴こえてきます。アレグロ・モルト・モデラートではシューベルトの世界が始まる幕開けの予兆を感じさます。程よく早くという感じが難しいと思いますが、岳さんのイメージはどの様な感じなのでしょう?
A4.シューベルトの音楽に触れるときに、彼の「死」に対する思慕や憧憬、また「孤独な放浪者」というある種残酷な宿命のようなものは感じられずにはいられません。今回の収録曲である作品90も、そのような表象のある「アレグロ・モルト・モデラート」で始まっています。悲運な宿命を背負いながら前進しなければならない…そのようなテンポで演奏しなければなりません。
Q5.ドビュッシーの曲も有名ですが、特に岳さんの演奏は凄いと私は思いました。というのは多くの演奏家の演奏は、直ぐに飽きてしまうのですが、岳さんの演奏はドビュッシーの世界そのものに誘われます。ですから何度聴いても飽きません。特にベルガマスクの1曲目のプレリュードは最初の一音から、バーンと彼の世界が展開したように感じられました。この作曲家の作品の演奏にあたり、何か注意されていることはありますが?
A5.ドビュッシーの音楽にはカメレオンのように変化する多彩さが特筆されます。収録曲の「ベルガマスク組曲」と「喜びの島」は、それぞれ初期と成熟期に書かれた作品で、音使いも様式感も全く違うのですが、鋭敏なタッチと繊細なペダリングが要求されることは間違いないでしょう。
Q6.ブラームスのインテルメッツォも素晴らしいですね。演奏の技術としては中級者でも弾けると聞いていますが、あの音楽性を表現するのは中級者では難しいと思います。
この演奏にあたり岳さんの秘訣などありますでしょうか?
A.6この曲を含むブラームスの晩年の小品集には、作者独特の厭世観があります。確かにピアニスティックな技術としては「中級者」でも扱える作品かもしれませんが、作品本来の深奥を伝えるためには「呼吸の深さ」を意識することが大事でしょう。また、メロディーに歌詞をつけてみるのも良い手法かもしれません。曲の精神に呼応しながら、より個人的なメッセージを伝えることができると思います。
Q7.大変素晴らしいアルバムなのですが、再販の予定はありますか?
A7.はい!リクエストのお声が多ければ喜んで。



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