削りたての音── 鮮度と重力の調律
- lifesound
- 8 時間前
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鰹節を削る。
ただそれだけのことなのですが、見ていると妙に感心してしまうことがあります。
木の鉋を静かに引くと、乾いたリズムとともに鰹節がふわりと舞い上がる。その瞬間、香りが立ち、旨味が目を覚まします。
袋詰めの削り節ももちろん美味しいのですが、削りたての鰹節にはまったく別の鮮度があります。
そこには素材の力だけでなく、削る人の身体のリズムや力の加減、そして重力がきれいに働いています。それらがうまく揃ったときにだけ、あの「削りたての香り」が生まれるのだと思います。
こういう瞬間に出会うと、ああ世の中はうまく出来ているものだな、と妙に感心してしまいます。
そんなことを考えていると、ふとオーディオのことを思い出します。
実は音楽再生にも、どこか似たところがあるのです。
重力というエネルギー
たとえばアナログプレーヤー。
トーレンスのThorens TD 1600に使われているナイフエッジ支持という仕組みは、よく考えると面白い構造です。
鋭い一点で支えることで、プレーヤーのサスペンションは地球の重力に素直に従って動きます。

つまりこのプレーヤーは、地球の引力という巨大なエネルギーの中で動いているわけです。
レコードの溝に刻まれた振動を針先がなぞるとき、そこでは物質と物質が触れ合い、摩擦しながら音が生まれます。
データのやり取りのような軽さではなく、そこには質量を伴った手応えがあります。
演奏家が楽器に叩き込んだエネルギーが、物質を通してもう一度立ち上がるような感覚です。
身体もまた共鳴体
こういう音を聴くとき、実は聴き手の身体も少し関係しているような気がします。
足裏を床に預けて、身体の力を少し抜く。すると音の感じ方が変わることがあります。
身体が重力を受け入れているとき、音楽の実体感がふっと立ち上がる瞬間があるのです。
不思議な話ですが、オーディオをやっていると、時々こういうことを考えてしまいます。
二つの世界
デジタル再生は、とても静かで透明な世界を作ってくれます。一方でアナログ再生には、削りたてのような質量の手応えがあります。
どちらが良いというよりも、それぞれ違う魅力があります。
ライフサウンドのチューニングは、そのどちらに対しても音の流れを邪魔しているものを取り除くという作業に近いのかもしれません。
少し大げさに言えば、音が自然に流れる道筋を整えるような仕事です。
鰹節を削るときも、オーディオをチューニングするときも、やっていることはどこか似ている気がします。
どちらも結局は、
「削りたての瞬間」
をどうやって生み出すか、ということなのかもしれません。
少し変な話になってしまいましたが
ふと足元を意識してみてください。
あなたの身体は、今、重力を感じていますか。



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