良い音とは何か? 忠実再生とメーカーの音色、そしてSonic Correctorの役割
高価なオーディオ機器を揃えれば、良い音が手に入るのでしょうか。
「良い音を聴きたい」——オーディオを趣味とする方なら、誰もが抱く願いだと思います。
しかし、良い音とは何でしょうか。
高額な製品を揃えることでしょうか。解像度や音場感を高めることでしょうか。それとも、メーカーが理想とする音を聴くことでしょうか。
私は、まず自分が求めている音を明確にすることが大切だと考えています。
何を良い音と感じ、音楽のどのような表情を聴きたいのか。それが曖昧なままでは、どれほど高価な機器を揃えても、求める音を実現することは難しいでしょう。
目次
1. オーディオメーカーの音色と「忠実再生」の真実
オーディオメーカーには、それぞれ明確な設計思想があり、製品にはメーカー固有の音色や個性が現れます。
それは必ずしも悪いことではありません。メーカーが長年培ってきた技術や経験、音に対する考え方が製品に反映されているからです。
ただ、ここで一つ考えてみたいことがあります。
忠実再生を掲げるメーカーが、同じ音源を再生したとき、なぜそれぞれ異なる音になるのでしょうか。
同じ音源を再生しても、機器によって音の印象は大きく異なります。そこには、回路設計や使用部品、素材、振動への対処など、さまざまな要素が関係しています。そして、それぞれのメーカーが考える「理想の音」も反映されているのでしょう。
つまり、忠実再生という言葉を掲げていても、その実現方法や目指す音にはメーカーごとの考え方があるということです。
LifeSoundは、メーカーが考える理想の音を聴くことと、録音された音楽をできるだけ正しく再生することは、必ずしも同じではないと考えています。
2. 家庭での再生には、それぞれの個性がある
もちろん、録音された音をそのまま家庭で再現することは簡単ではありません。
スピーカーの設置環境も違えば、部屋の広さや構造、床や壁の素材も違います。使用する機器やケーブルも異なります。同じ音源を再生しても、家庭ごとに再生音が異なるのは当然です。
だからといって、メーカーが考える音色に合わせる必要があるのでしょうか。
LifeSoundで目指しているのは、特定のメーカーの音を作ることでも、特定の音色を押し付けることでもありません。
録音された音楽の情報をできる限り損なわず、再生信号を正しく伝えること。そして、その結果として、音楽本来の表情や躍動感を自然に感じられるようにすることです。
家庭ごとに環境が違う以上、再生音にそれぞれの個性が生まれるのは避けられません。しかし、その中でも音楽が持っている魅力を、どれだけ引き出せるか。そこにオーディオの本当の面白さがあると思っています。
3. なぜ現代の音楽は窮屈に聴こえることがあるのか
さて、ここから少し技術的な話になります。
最近のデジタル音源を聴いていて、音が詰まっている、窮屈に感じる、あるいは音楽の躍動感が乏しいと感じたことはないでしょうか。
高級なオーディオシステムで再生しているのに、昔のLPレコードで聴いたような伸びやかさや、音楽の自然な呼吸が感じられない。その原因の一つとして考えられるのが、録音・マスタリング段階で行われるダイナミクス処理です。
音楽制作では、曲全体の音量を大きく聴かせるために、コンプレッサーやリミッターという装置が使われます。これらは、音の大きな部分を抑えることで、曲全体の平均的な音量を上げるためのものです。
しかし、その処理が過度になると、本来は大きさに変化があった音楽の波形が平坦になってしまいます。音量は大きく聴こえても、音の強弱や躍動感が乏しくなり、音楽が窮屈に感じられる場合があります。
波形を表示したときに、上下が平らに押しつぶされたように見える状態は、俗に「海苔波形」と呼ばれています。
もちろん、波形の見た目だけで音楽の良し悪しを判断することはできません。大切なのは、実際に聴いたとき、音楽本来の表情や自然な起伏が感じられるかどうかです。
4. Sonic Correctorというアプローチ
こうした問題に対して、ライフサウンドが注目しているのが「Sonic Corrector」です。
Sonic Correctorは、TOP WINGが開発したアクティブ・アナログフィルターです。DACなどのソース機器とアンプの間に接続して使用し、音源の状態に応じて3種類のフィルターを使い分けることができます。

その中でも、今回特に取り上げたいのが「RECOVER機能」です。
RECOVERは、録音時に失われた音を推測して作り直すものではありません。また、単純に低音や高音を増減させるイコライザーとも違います。
その最大の特徴は、音の波の重なり方(位相)を利用して、平坦になった波形のピークを表出させることにあります。
5. RECOVERの仕組みを分かりやすく説明すると
少し想像してみてください。
音楽の音は、一つの単純な波ではありません。低音、中音、高音など、さまざまな周波数の音が同時に重なり合ってできています。
それぞれの波にはタイミングがあります。例えば、二つの波が同じタイミングで重なれば大きくなり、タイミングがずれて重なれば、合成された波の形は変わります。このタイミングの関係を「位相(いそう)」と呼びます。
RECOVERは、この位相を利用します。内部のアナログフィルターによって、周波数ごとの波のタイミング(位相)を微小に回転・変化させるのです。
ここで重要なのは、音の大きさを周波数ごとに直接変えるのではなく、波のタイミングを変えるということです。
そのため、個々の周波数の音量を大きく変えなくても、それらが重なり合ったときの波形は変化します。その結果、平坦になっていた波形にピークが自然と表れるようになります。
これがRECOVERの基本的な仕組みです。つまり、元の音源に残っている音の成分を利用し、その重なり方を変えることで、波形の形状を変化させているのです。
6. 音が元に戻るということではない
ここは誤解してほしくないところです。
RECOVERによって波形のピークが表れても、録音時に失われた演奏の強弱や音楽情報が、そのまま元通りになるわけではありません。
例えば、録音時に大きな音を小さく抑え込んだ場合、そのときに失われた本来の演奏の強弱を、RECOVERが知っているわけではありません。
RECOVERが行うのは、残されている音の成分の位相関係を変化させ、合成された波形の形を変えることです。その結果、波形のピーク値が大きくなることもあります。これは、録音時のダイナミックレンジを完全に復元することとは異なります。
しかし、波形の形が変わることによって、聴感上の印象にも大きな変化が生まれます。
メーカーがこの技術に「RECOVER(復活・回復)」という名前を付けた理由も、こうした波形の変化によって、平坦化した音楽信号に新たな表情と息吹を与えることにあるのでしょう。
7. もう二つの機能(DE-EMPH / ANTI-ALIAS)にも意味がある
Sonic Correctorには、RECOVERのほかに「DE-EMPH」と「ANTI-ALIAS」という機能も搭載されています。
DE-EMPH(デエンファシス)
CDなどで使用された「プリエンファシス」という処理に対応するものです。プリエンファシスとは、録音時に高音域をあらかじめ強調しておき、再生時に元のバランスへ戻すための仕組みです。この処理が施された音源は、再生時に適切な補正を行う必要があります。DE-EMPHは、そのための機能です。
ANTI-ALIAS(アンチエイリアス)
高周波帯域に含まれる不要な成分を低減するためのフィルターです。特にハイレゾ音源などでは、可聴帯域を超える高周波成分が含まれる場合があります。こうした成分は、再生機器によっては不要な負担になることもあります。ANTI-ALIASは、それらを抑える役割を持っています。
このように、Sonic Correctorは単なる音色調整機器ではなく、音源に含まれる異なる問題に多角対応する3種類のアナログフィルターを備えた装置なのです。
8. 数値だけでは分からない音楽の豊かさ
オーディオの世界では、解像度、周波数特性、ダイナミックレンジ、S/N比など、さまざまな性能数値が語られます。もちろん、これらは再生機器を評価するうえで大切な要素です。
しかし、それらの数値が優れていれば、必ず音楽がより豊かに感じられるというわけではありません。
Life Soundが大切にしているのは、音楽が本来持っている「生命感」です。
演奏者の息遣い、楽器固有の響き、音の立ち上がりや消え際、そして音楽全体に流れる躍動感。これらは、演奏者の表現や楽器の個性から生まれるものであり、再生装置が作り出すものではありません。
音楽は、単に音程や音量が正しく再現されれば、その魅力が伝わるというものではありません。
演奏者の微妙な強弱や間合い、楽器が持つ固有の振動や響き、音が生まれてから消えていくまでの時間的な変化。
そうした要素が自然に再現されてこそ、演奏に込められた意思や感情が伝わってきます。
しかし、再生の過程でそれらが損なわれたり、機器固有の音色によって変化してしまえば、録音された音楽本来の表情も変わってしまいます。
Life Soundが目指しているのは、特定の音色を作り込むことでも、音に何かを付け加えることでもありません。
再生の過程で生じる不自然な変化をできる限り抑え、録音された音楽が本来持っている豊かな表情や生命感を、そのまま感じられるようにすることです。
Sonic Correctorも、そのための一つの手段です。ただし、接続すれば何でも改善するというものではありません。音源の状態や再生機器との組み合わせによって、効果の現れ方も異なります。だからこそ、機能の説明だけで判断するのではなく、実際の音楽を聴きながら、その働きを確かめることが大切だと思います。
オーディオは音楽のためにあります。高価な機器を所有することや、メーカーが考える理想の音を聴くことが目的ではありません。
音楽が本来持っている魅力を、もっと自然に、もっと豊かに感じたい。
そのために何ができるのか。今回、Sonic Correctorの技術的な側面にも少し踏み込んでみたのは、そんな思いからです。



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