top of page

高能率スピーカーに、なぜ大出力アンプが必要?

lifesound
10月29日
読了時間: 6分


アルテックやJBLのヴィンテージスピーカーを愛用する方の中には、大出力アンプや高いダンピングファクターを求める方も少なくありません。


しかし、ここで一度、考えてみたいのです。

高能率スピーカーを選びながら、なぜ、さらに大出力のアンプを必要とするのでしょうか?

かつて、サンスイなどのアンプメーカーは、大出力や高いダンピングファクターを自社製品の優位性として訴求してきました。





↑ サンスイのアンプには苦い思い出があります。

アマチュア時代に購入した、SANSUI AU-α907です。

展示品だったため、5割引きにしてもらえました。カッコいいアンプ、高級なアンプを、かなりお得に買えたと大喜びしたものです。自宅に高級品をお迎えした喜びもありました。ワクワクしながら電源を入れると高級品ならではのような光がPOWERのスイッチの上に点灯した。(確かオレンジ系の色だったと思う。)流石、高級品凄いと感動した。

ところが、いざ音楽を聴いてみると……。

「??????」「??????」

あまりのつまらなさに、大感動から大ショック。時間をかけて鳴らし込をしたが、このアンプでは音楽を聴くこと自体がなくなってしまいました。見てくれは気に入っていましたが。サンスイの前に使っていたDENONのPMA-501の方が音楽再生は楽しめていた。



こんなに見栄えだけの製品を作っていたら、このメーカーはいずれなくなるな。そんなことまで思ったものですが、結果的にサンスイは事業を継続できなくなりました。


その後、このアンプは当時流行していたレーザーディスクを観るための、AV用アンプになりました。そして7年後、売却することに。

購入価格は99,000円。なんと、77,000円で売れたのです!

結局、このアンプについて嬉しい思い出として残っているのは、その売却価格だけでした。

このアンプで音楽を聴くと、本当につまらない。音楽を聴くことが、かえって気の重い体験になってしまう。

そんな苦い思い出があります。だからと言って、サンスイを恨んではおりません。お気の毒にと思っています。


振り返って考えると、そうした販売戦略が、オーディオファンのアンプに対する価値観に影響を与えてきた面もあるでしょう。

では、理論的に考えてみましょう。


高能率スピーカーの本来の長所


高能率スピーカーは、少ない電力で大きな音圧を得られることが長所です。


例えば、出力音圧レベルが100dB/W/mのスピーカーなら、規定された測定条件において、入力1W、距離1mで100dBの音圧を得られます。


単純計算では、入力電力を10Wに増やせば約110dB、100Wなら約120dBとなります。ただし、これはスピーカーの許容入力や音圧圧縮、歪み、測定条件などを考慮しない理論上の値であり、実際にその音圧が得られることを保証するものではありません。


重要なのは、必要な音圧を得るために、どれだけの電力が必要なのかということです。


もちろん、音楽には瞬間的なピークがあります。大きな音量で聴く場合や、インピーダンスの低下が厳しいスピーカーでは、十分な出力余裕が必要になることもあります。


しかし、家庭で必要な音量を十分に確保できているのであれば、アンプの最大出力が大きいという理由だけで、さらに大出力のアンプが必要になるわけではありません。


ダンピングファクターの数値は、音質を保証するのか?


では、ダンピングファクターはどうでしょうか。

ダンピングファクターは、スピーカーの公称インピーダンスをアンプの出力インピーダンスで割った値です。


一般に、アンプの出力インピーダンスが低いほど、スピーカーの逆起電力などに対して電気的な制動を与えやすくなります。


ただし、ダンピングファクターの数値だけで、実際の制動や音質が決まるわけではありません。スピーカーのボイスコイル抵抗、ケーブルの抵抗、ネットワークの構成、スピーカー自体の機械的な特性なども関係します。


また、ダンピングファクターが高いほど、必ず音楽的に優れているという理論もありません。

数値としての性能と、実際に再生される音楽の豊かさは、分けて考える必要があります。


小入力時の線形性と、歪みの質


さらに、技術的・音響的な視点で見落とせないのが、小入力時の線形性(リニアリティ)と歪みの質です。


高能率スピーカーを家庭で使用する場合、通常のリスニングでは、アンプの定格出力に対してごく小さな電力で再生している時間が多くなります。


だからこそ、最大出力の大きさだけでなく、実際に使用する小信号領域で、アンプがどのような特性を示すのかという視点も大切です。


もちろん、大出力アンプだから小信号の再現性が劣るとは限りません。回路方式や設計、部品、動作条件によっても異なります。


しかし、最大出力の数値が大きいことだけで、小さな音の表情や微細な余韻まで優れていると判断することもできません。


アンプを選ぶ際には、出力の大きさだけでなく、こうした部分にも目を向けたいものです。


過渡応答と、エネルギーの減衰


もう一つ考えたいのが、音の立ち上がりと減衰、そして余韻の表現です。


ダンピングファクターは、スピーカーの振動を電気的に制動する能力に関係します。しかし、その数値が高いからといって、必ず音の立ち上がりが優れるわけでも、自然な余韻が失われるわけでもありません。


実際の音の立ち上がりや減衰は、アンプだけでなく、スピーカーの振動系やキャビネット、ネットワーク、設置環境など、さまざまな要素によって決まります。


だからこそ、ダンピングファクターの数値だけを見て、音の躍動感や空間の広がりまで判断することには無理があります。

数値上の制動性能が高いことと、音楽が生き生きと再現されることは、必ずしも同じではないのです。


何を基準にアンプを選ぶのか


高能率スピーカーを選ぶのであれば、まず、その能率の高さを生かして必要な音圧を確保すること。そして、スピーカーの電気的・機械的な特性や、聴く音楽、部屋の環境に合ったアンプを選ぶことが大切です。さらにスピーカーも同じですね。


高能率スピーカーの長所を生かすことと、アンプの出力を大きくすることは、同じではありません。(気分の問題かもしれません。)


必要な出力を確保したうえで、さらに何を求めるのか。

その問いを持たずに、出力や数値の大きさだけを追い求めてしまうと、本来スピーカーが持っている長所を見つめることから、離れてしまうのではないでしょうか。


オーディオは、アンプの出力を競うためにあるのではありません。音楽を聴くためにあるのです。


とは言え、個人の趣味ですからね。例外がありすぎですが。(汗)


 
 
 

最新記事

すべて表示
原音再生のその先に―「正確さ」と「音楽のリアリティ」ジレンマ

今回はライフサウンド川越研究所のM所長の呟きです。が、少々強面感じですが、真実ですので受けとめて下さい。よろしくお願いします。 かつて、オーディオの世界にはひとつの大きな目標があった。「原音再生」である。 「生演奏の空気感をそのままリビングに蘇らせる」―この大義名言のもと、オーディオファイルやメーカーは、いかに歪みを削ぎ落とし、周波数特性をフラットにするかという果てしない技術革新を重ねてきた。専門

 
 
 

コメント


  • facebook
  • Twitter Round
  • googleplus
  • flickr
今すぐ寄付する
みなさんの力で変化を起こしましょう

ご協力ありがとうございました。

bottom of page